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P. D. Q. バッハの音楽

2008/ 01/ 20
                 
P.D.Q.バッハ 短気ん律クラヴィーア曲集というわけでP.D.Q.バッハのCDを入手!
The Short-Tempered Clavier and Other Dysfunctional Works for Keyboard
ジャケットの写真だけでもあやしすぎると一目で分かりますが…。バッハの21番目の息子の作品なんですってば。
            

ある日、夫がずいぶん夜更かししていた。翌朝電車に乗っていたら、携帯に「昨日はウィキの珍項目で遊んでしまいました。すみません。」というメールが。珍項目?

↓これです。
Wikipedia:珍項目

ぶっはー! なんじゃこりゃー!
夫は頭に出ている「0.999…」にえらく感銘を受けたようで、私に説明したがっていました。「1と0.999…は等しい」って話。いやー、私もびっくり。そういうのから、「あーそうそう、これこれ! ヘンだよねー!」やら、「これをまじめに語るか?!」まで、いろいろ。まあ見てみてください。私はまだすべて見ていないので、ぼちぼち見ていきたいと思います。はまりそうだなー。
関連項目には、「世界最初の一覧」「世界一の一覧」などもあり、これもおもしろそう。わくわく。

で、そんな中から夫が見つけたのがこのP.D.Q.バッハ(1807~1742?)。
彼はかのヨハン・セバスチャン・バッハの21番目の息子。名前の「P.D.Q.」は略ではなく、これだけ。これは英語では"Pretty damn quick"(大至急)という意味らしい。J.S.バッハは彼に音楽的訓練を施すことがなかった。そして彼への遺産はカズーのみであった。…カズーってなんだろ、と思ったら、アフリカの楽器だって。
こんな人いるわけないやろー!
というわけで、はい、そうです。これは架空の人物で、正体はアメリカのピーター・シックリーという人であった。ちなみに「1807~1742?」と書きましたが、これは間違いではなく、お墓にこのように書かれていると。いや、だからお墓なんてないわけなんだけど。

ピーター・シックリー(Peter Schickele)…シックリー「教授」(1935~)は、ジュリアード音楽院出身で教鞭もとっていた作曲家兼ファゴット奏者、そして指揮やキーボードもこなす奇才、と。1965年にロンドンのロイヤル・フェスティバルホールで、イギリスの漫画家兼テューバ奏者(←これもなんだかなー)ジェラルド・ホフナング(1925~1959)が主催した冗談音楽の祭典「ホフナング音楽祭」に向こうを張って、「P.D.Q.バッハ音楽祭」を開いたという。カーネギーでやったそうですよ…。以来、NY名物として不定期に音楽祭は開かれているらしい。
というわけで、P.D.Q.バッハ、というかシックリー教授のこの音楽は冗談音楽です。冗談音楽とは、聞き手を笑わせることを目的につくられた音楽。具体的には、既成の曲のパロディーだったり、楽器ではないものを楽器として演奏したり。歌だったら替え歌かな?

で、今回買った「The Short-Tempered Clavier and Other Dysfunctional Works for Keyboard」
「The Short-Tempered Clavier」とは、もちろん、P.D.Q.バッハの父である(じゃないんだってば)J.S.バッハの「Well-Tempered Clavier 平均率クラヴィーア曲集」のパロディーでございます。邦題は「短気ん律クラヴィーア曲集」 …はあ。

演奏者は、ピーター・シックリー教授(蒸気オルガン)
クリストファー・オライリー…この方は「著名なコンサート・ピアニスト」だそうだ。そしてレディオ・ヘッドのファンみたいで、カヴァーアルバムまで出していらっしゃる。
トゥルー・ラヴ・ウェイツ~クリストファー・オライリー・プレイズ・レディオヘッド
デニス・ジェイムズ「著名なシアター・オルガニスト」
デビッド・ロビンソン「だれでもかまわないじゃないか」…誰だろう?


1. The Short Tempered Clavier
短気ん律クラヴィーア曲集 本当に難しいものを除いてすべての長調と短調によるプレリュードとフーガ(円周率くらいやさしいシックリー番号)


それぞれの曲の前に紹介が入っていて(ライブ盤ということになっているのだ)、もちろん全部英語。が、国内盤CDを買ったので訳文がちゃんとついてる。よかったー。しかし…憲法改正がどうこうって…。???
演奏者のクリストファー・オライリーについては「すぐれたクラシックのピアニストでありながら、スノッブではない人、バッハとショスタコーヴィチは練習しても、ホラー映画の鑑賞は欠かさない人」と。

で、12の調のそれぞれプレリュードとフーガが演奏されるんですが。さっそく第一番、ハ長調のプレリュード。J.S.バッハの第1巻と和音が同じで、その変形版…かと思ったら、あらら、ブルースの音階。ぷ。そしてフーガは

ソソソ ソソソ ソソソ ソソソ
シシシ シシシ ドードドシラ…

がはははは! 小学校の頃、木琴で弾いて遊んだりしませんでした? あれです。
第2番 ハ短調では、フーガのテーマはなんと

ソソソ ♭ミー ファファファ レー

ベートーベンの「運命」です。それだけではなく、他の楽章のテーマまで出てきて、ちゃんとフーガになってる! すごーい。
こんな感じで、「メリーさんの羊」やら、「きらきら星」、「ねこふんじゃった」の最後に弾く「ドッソソラーソ シ ド」、そしてブラームスやらチャイコフスキーやら、モーツァルトやら、それから私が気づいていないものもたくさんあると思う。それが2つ3つ重なってるときもあって、すごい。そして、おかしい…笑ける…ぶはははは!

ヘ長調のフーガのテーマは「ドファソラー」。で、「ソドレミー」になったり何度も出てくるわけだけど、これなんの曲だっけ…と考えていたら、盛りあがったところで

ドファソラーラー ラソラファーファー
ファソラ♭シーレー…

「ユーアーマイサンシャイン」でした! がははははは! その上

ドーファーソ ラファーソラーファ 

と、ヘンデルの「水上の音楽」までかぶさってきた。ぎゃははははは! そうか、同じ「ドファソ」だしなあ。
イ長調フーガのテーマは、ウエストミンスター寺院の鐘のメロディー(学校のチャイムですね)。ペダルをガンガン効かせて鐘っぽくしてあるんだけど、最後の音がまた、たぶん消えるまで伸ばしてる。ずーっとずーっと…。
その他、他の曲の引用というよりも、J.S.バッハの元の曲を変化させたものなんかは、へんちくりんな和音で終わったりしていたときもあり、最後の最後まで気を抜かないというか。ぶははははは!

いやーすごいすごい。笑けたー。平均律をまじめにがんばっていた者だけに(今だって大好きだしバイブルみたいなもんだ)なおさら…。
元の曲はもちろん、いろんな曲を知っていないと楽しめないわけですが、でも、これだけ聴いてもけっこうきれい。1曲が短いから飽きないし。そしてクリストファー・オライリー氏も、よく弾くなあ、うまいなあ。

そして拍手のあと、次の曲の紹介へ。
実はこの部屋は、ルーズベルト大統領のポーク・バレル労働政策時代だったかに、納税者たちのお金を無駄遣いして必要もない仕事をした一環として、無駄に改造されているのだと。そして西側の壁を作ったときに、肝心なものを隠してしまったのだ、と。
ここでドリルの音、そしてガラガラガッシャーンという音が。どうやら、破壊された壁の向こうからシアターオルガンが出てきたらしい…。
というわけで続く。

            
                                  

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